児童会館(学童)で子どもと関わる仕事をしていたので、子どもがおもしろがる、興味を示すツボみたいなのが直感的にわかる。
そんな目線でCoder Dojoメンターなどプログラミングのボランティアをしているわたしがおすすめするのは「いちばんはじめのプログラミング[Scratch3対応]」 たにぐちまこと著。本屋さんにダーっと並んだ児童向けScratch本を見ると、たいてい教科書仕立ての構成になっているものが多いが、この本はちょっとテイストが違う。きちんと教えてくれるけど「遊ぶ本」なのだ。
Scratchを始める前のところから説明してくれる
そもそもScratchをやる以前にパソコンとかプログラミングとか大丈夫かな…という心配があるかもしれない。Scratchはひらがなが読める小学校に上がるくらいの年齢から取り組める。
この本のはじめにマウスの操作方法やブラウザについて説明があり、プログラミング学習に安心して入れるよう配慮されている。Scratchのアカウント作成方法から6つのゲームの作り方を通して、Scratchをしっかり使えるようになっていく。
初めての人が、あれ?「10歩動かす」なのにほんのちょっとしか動かないじゃんって疑問に思ったりするところも、ここでいう「一歩」がどのくらいの大きさなのか、ブロックがなぜこういう動きをするのか、細かなところまでフォローしてくれる。
わからないことを都度解決できないまま先に進むのってエネルギーを使うが、例えば「座標ってなんだろう?」など学年によってはわからない用語が出るたびに、その場で説明してくれるから助かる。納得しながらインプット→アウトプットを繰り返せるので理解が定着する。
プログラミングするときの考え方を教えてくれる
序章でScratchの基本的な使い方を確認したら、1章では実際にプログラムを組んでみる。作るものはストーリー仕立てになっていて、次はどうなるんだろうとワクワクしながら進めるので、プログラミングが「難しい」とか「学習している」なんて感じることなく夢中になれるだろう。
2章からは、ダウンロードして使える材料(背景やキャラクター)が用意されていて、Scratchのものとはまた違った楽しくてかわいいイラスト。本の説明通りにやっていくと、白鍵(鍵盤)を押すと音が出るようになって…楽しい!次は、次はと、どんどんやりたくなる。こういう気持ちになることが学びに大切だと本当に思う。
また、ゲームの作り方の他にコンピューターの小話もあったりと、Scratchの使い方だけにとどまらずコンピュータ周辺の学び要素がつまった一冊。きれいにコードを書く(ブロックを組み立てる)ことまで教えているあたりも、エンジニアならではの観点だ。
これ1冊終える頃にはお友達にも勧めたくなってるかも!
今回は図書館の電子図書を借りて試したが、紙の本を見ながらやる方がおすすめ。電子版だとパソコン画面が2つないと厳しいし、画面の大きさによってはブロックがやや見づらい可能性もある。
この本でScratchの操作方法を学び、プログラムをひとつ試してみるのにかかる時間は、ゆっくり丁寧にやっても半日程度あれば十分。普段忙しければ長期休暇など利用してやってみては。進めていくうちに難しいと感じたら飛ばして次の章とか、焦らずに学年に応じて4章、5章…と進んでいくのもいいだろう。前の章で習ったことを、次の章で繰り返したり応用したりしながらステップを踏んでいくので、スキルが確実に身につく。
プログラムが間違ってないはずなのに動かないときは、ブロックに入力した文字をよく確認してみよう。英数字を全角にしている(プログラムは半角英数字で書かなければいけない)打ち間違いはよくあるので、うまくいかないときは子どもと一緒に見てあげたい。ゲームの内容は、親世代が懐かしさをふわっと感じるような世界感なので、見てても一緒にやっても楽しめると思う。
プログラミングって本当に必要なんだろうか?と考える前に
「Scratch」や「プログラミング」で検索すると情報はあふれているが、頭で理解するのではなく「あぁ、プログラミングってこういうものなんだ」という概念がこの本から伝わるだろう。プログラミングに触れるきっかけとして、「プログラミングってこんなに楽しいんだ」というのをただただシンプルに伝えているところがわたしは好きだ。
著者のたにぐちまことさんはこのほかにも、マンガでマスター「プログラミング教室」など子ども向けの本を執筆している。ご自身が子どものような豊かな想像力を持って書いているのが、どの本からも伝わってくる。どれも、子どもと大人とプログラミングの架け橋になるような素敵な本だ。